世界中からエスノグラファ―たちの集まる、EPIC 2018の1日目にもうひとつ、個人的にも印象に残るメッセージがあった。

国境を超えてエスノグラフィが行われるとき、よく話題になるのが「文化的な違い」だ。自分の経験でも、海外のクライアントと共に日本で訪問観察やインタビューを行うと、予想外のところに興味を持ったりこだわったりされて面食らうことが少なくない。またそれが国際的エスノグラフィの面白みでもある。そうした仕事のレポートでは「文化的特性」の話題に触れるのも定番になっている。

しかし本当に「文化の違い」がすべての根源なのか? そんな問いを投げかける発表があった。
エスノグラフィで国際比較をすると、さまざまな違いが軒並み「文化的特性のせい」にされがちだ。しかし実はもっと実際的な、社会・経済・ビジネス上のしくみや条件の違いが前提としてあり、そこを理解し、ふまえなくてはことを見誤る──という議論である。*

「異文化」は物語として興味をひくことが多く、特に「日本人は自分たちが特別な性質を持っていると思いたがる」とは、会議に参加していた文化人類学者も指摘していたことだ。
ふと考えると、いつも観察を読み取る際、安易な異文化論議に流れてはいなかったか? それは国の違いだけのことではないかもしれない。

*Goals and Methods in International Business Ethnography (Yuuki Hara, Hitachi; Lynn Shade, Studio S)