オランダのデザインウィークで、おもしろい展示に出会った。「冷蔵庫がなぜ私の誕生日を知ってるの?」というタイトルで生活の中のIoTを再考した展示で、真面目な現実主義とシニカルな視線が共存している。
「製品がネットにつながると、何がよくなるの?」「IoTで私の情報を見られるのは誰?」など10あまりの問いに答える構成で、社会的意義や個人ニーズに合わせたサービス提供といった正の面とともに、個人情報がハックされる危険性など負の側面も紹介され、また提供者と利用者がよい関係を築いた事例も紹介されている。
その終盤に「IoTの寿命」というコーナーがあった。提供者の買収や、アプリが古くなって新しい端末で使えない等、さまざまな事情で寿命を終えた事例が「墓碑銘」とともに並ぶ。これに対し、ユーザーが自分でパーツ交換できる配慮や、法人解散前に急遽オープンソース化するなどの方法で「生きながらえた」例も紹介されていた。
新しさを追う業界で、実際に利用された果ての「始末」を考えることは少ない。しかし永遠に続くサービスはないのに対し、集められたデータは決して自然消滅しない。個人情報はどこでどうなり、誰が責任を持つのか? 誰も約束はできない。
展示の最後にも痛烈な仕掛けがあった。選択肢が表示され「あなたはどちら?」と問われる。
「自分の個人情報は削除して欲しい」を選ぶと、「あなたはこの展示会にふさわしくありません。とっととお帰りください」。「みんなのためなら情報を使われてもよい」を選ぶと、「ありがとうございます。あなたの情報をいくつかのファンドと、保険会社と、あなたの別れた元パートナーに送信しました」。