カンファレンス2日目、午前の分科会で「アジャイル」をテーマにしたセッションに参加した。アムステルダムを代表する2つのサービスデザイン事務所の発表が目当てだ。サービスデザインの効果を上げるために、ビジネスとの間にどのような関係を作るか、その中でスピードを求める環境条件としての/仕事のしかたとしてのアジャイルという視点に対して、それぞれの視点からの考察、提言が行われた。
カンファレンスの運営・司会もつとめたSTBY(スタンバイ)のGeke van Dijk氏は、与件が最初からすべて明らかでなく、作業しながら新たな課題が出現し続けるようなプロジェクト──「ムービング・ターゲット」にとり組むために、「フレキシブルであり続けること、同時に構造的であること」が大事だと説いた。特にITビジネスのように変わり続けるアジャイルな環境で、分野横断的なチームで仕事をしてきての実感だ。
これに対し「アジャイル」をより積極的にプロセス内へ取り込む視点から語ったのがessenceのHarald Lamberts氏。郵便局や空港など公共性のある領域の事例を紹介しながら、スピーディな問題発見と解決のサイクルを小刻みに(アジャイルに)回しながら、同時に大きな目標へ向けてのビジョンを共有し続けること、そのためにいわば「スピードの異なる2本の車線」を持ち、かつ両者をつなげておくことが有効、と強調した。
「アジャイル」は1日目にも出てきたキーワードで、ユーザー視点から始まり本質的に時間を要するサービスデザインのプロセスが、現代のスピーディなビジネス環境において効果を発揮できるようにすることが課題、という発言もあった。今日の2人の発表では、時に背反するサービスデザイン視点とスピードの追求を上手に組み合わせ、あわよくば相乗効果を生み出そうとするどん欲な姿勢が印象的だった。