今回参加したEPIC 2018、実は自分たちでも発表を考えたいと思いながら、応募に至らず断念した経緯があった。ところが初日のスライドセッションで、考えていたことに近い話題が出てきて嬉しくもあり、同業者として強い共感を覚えた。

それは3つの短いスライドショーを集めた分科会で、タイトルは「Whose Story is it Anyway?*(このストーリーは誰のもの?)」。3本の内容はそれぞれ、福祉の助けを借りる人々へのインタビュー、メキシコ市の地震で被災者間のSNSによる情報共有、けがや病気に見舞われた人々へのインタビュー事例を紹介したもの。全体を通して協力者のストーリーをめぐる、本人・エスノグラファー・クライアントの視点の違いにスポットが当てられた。

中でも、生活保護を受ける人へのインタビューを調査者がストーリーにまとめて整理し、本人に見せて意見や修正点を聞いたところ、一人が自分の物語を反芻してぽろっと涙をこぼし「私の本当の名前を(偽名でなく)使ってください」と言った、というエピソードは強く印象に残った。

鮮烈な事例発表を聞きながら、人間と直に接する仕事の原点を振り返って共有できるだけでも、集まりに参加した甲斐があったと強く感じた瞬間だ。

*Whose Story Is It, Anyway? (Curator: Carrie Yury, Yuryka)
-Play It Back: Research as Intervention (Natalie Napier, InWithForward)
-Life and Death of Evidences: The Role of Digital Interactions during Mexico’s Earthquake (Francisco Pulido Ramirez, INSITUM)
-The Story as Evidence: It’s Yours, It’s Mine, It’s Theirs (Nik Jarvie-Waldrom, Empathy)