さらば甘夏
隔年結果、という言葉をご存じだろうか?
柑橘類が、特に工夫せずぽつんと植えておくと、たくさん実る年(生り年)とあまり実らない年(不生り年)を交互に繰り返すことを言うらしい。
私たちの本社(登記上の本店所在地)の猫の額ほどの庭に、一本の甘夏の木がある。
今年は生り年、大豊作だった。
安心して食べたりおすそわけしたりできるようにと、あくまで念のため、検査機関に果皮ごとフードプロセッサーにかけて送り、放射能測定を頼んだところ、クロ判定が出た。
その値、3.45 Bq/kg。
「客観的・科学的な判断」以前に体が動かなくなり、輝くばかりの大きな甘夏の実は樹上に捨て置かれた。5月の連休を過ぎる頃にはつややかだった果皮も日に焼けて色褪せ、試しに一つもいで食べてみるとすっかり瑞々しさも失われている。木が痛むので放置できず、とうとう100個近く、全て摘んで廃棄となった。
ゴミ袋に詰めて集積所へ運ぶほんのわずかの道中、事の異常さを思った。
自らの丹精を処分しなければならなかった多くの人々の無念も。
来年は、食べたいのだけれど。