9月16日からロンドンで開かれているエスノグラフィの国際会議EPICの中で、インフィールドデザインは「アーティファクツ展示」の部に参加した。

展示プロジェクトは東日本大震災で被災した三陸の小さな漁村の、新しいコミュニティとしての将来像を描いたシナリオプロトタイプ「船森物語」。もとになったのはNPO団体などが中心となって、住民へのインタビューをもとに作成したシナリオだ。インフィールドデザインは具体的なプロトタイプを作るステップから、富士通研究所の依頼を受けて参画している。

今回展示したのは、同じ一連のシナリオを小説、絵本、ポスター、マンガ、ビデオという5つの異なるメディアで表現したプロトタイプ。シナリオには地域のしくみ、住民サービス、デバイス、施設、将来の生活風景など、さまざまな提案が含まれている。この将来像を住人の漁師、お年寄り、子供、また自治体関係者や地域計画の専門家といった、知識も期待も異なる多様な関係者と共有し、フィードバックを得るために最適な形を模索する中から生まれたのが5つの表現だった。

展示の手応えは期待以上で、和文オンリーの展示品を補う英文説明のリーフレットは初日で半分がなくなった。2日目の9月17日にもうけられた展示観覧タイムには、他の展示とともに観客が集まり「表現によって相手の反応はどう違う?」「どれがいちばんうまく行った?」と質問も飛び出した。「自分もデザインリサーチをしているが、どうしてもリサーチ部分に注力してしまい、相手に伝える表現が課題」など問題意識に共感してくれる人も。マンガという日本独自の表現も興味を引いたようで、読めない日本語を熱心に眺める姿もあった。